歯科医院には様々な診療科目があります。虫歯治療や矯正歯科だけではなく、審美歯科など文字だけではどんな治療をしているのかイメージしにくいような診療科目もあるのです。ではたくさんある歯科診療科目の中で、歯科医師が今一番力を入れている診療科目は一体どれなのでしょうか。歯科医師が一番力を入れているということは、ニーズがあり、患者さんが多くいる診療科目とも言えます。そこで20~70代の歯科医師594人に「あなたが一番力を入れている歯科診療科目は?」という項目でアンケート調査を行いました。
歯科医師が今一番力を入れている診療科目第1位は?
早速ですが、アンケートの結果を一覧と円グラフでご紹介します。
「あなたが一番力を入れている歯科診療科目は?」というアンケートの第1位は「歯周病治療」でした。歯周病はあらゆる感染症のなかで「世界中で感染者数が最も多い病気」として、ギネスブックに載っています。歯周病とは歯を支えている歯肉や歯槽骨といった歯周組織に、歯周病菌が感染する病気です。感染すると歯周組織が少しずつ壊されてしまい、最終的に歯を支えられなくなり、抜歯せざるを得ない状況になってしまいます。歯茎が腫れたり、歯磨き中に出血があると、歯周病の初期症状の可能性があります。そのような症状が見られたら、進行させないためにもなるべく早く歯科医院で診察してもらいましょう。
第2位は「虫歯治療」です。虫歯は虫歯菌が糖を餌に酸を出して歯を溶かしていく病気です。糖はお菓子だけでなくお米やパンなど多くの食べ物に含まれています。糖を含む食べ物の食べかすが歯磨きで取り除かれず放置されると細菌のすみかになって、虫歯菌が活発になってしまい、やがて酸を排出しだします。この酸が歯を溶かしてしまうのです。初期の虫歯では歯に穴は開かず、唾液が持つ歯を再生する力である再石灰化を利用して治せます。歯の色が少し濁ったように見える箇所は初期の虫歯の可能性があるため注意が必要です。
第3位は「インプラント」です。虫歯や歯周病、怪我などで歯を失ったところに、人工歯根という歯の根元部分を埋め込み、歯の表面である人工歯冠を取り付けて、歯を再現する治療です。歯根があるので天然歯のような噛み心地を再現でき、見た目も天然歯と変わらない自然な歯にすることができます。インプラントの人工歯根に使われている素材は主にチタンです。チタンは生体親和性が高く、金属アレルギーを起こしにくいという特徴があります。
第4位は「予防歯科」です。歯科医院は歯が痛くなってから行く人がほとんどです。しかし歯は治療を何度も繰り返すと弱くなってしまい、将来的に歯が抜けたり、割れたりする可能性が高まります。そこで歯科医院で定期的に予防歯科処置を受けることで歯の健康を保ちやすくなり、虫歯や歯周病を予防できるようになります。予防歯科処置は歯をクリーニングし、虫歯や歯周病の原因となる歯石を除去したり、虫歯になりにくくするフッ素という成分が含まれた液体を歯に塗布したりします。
第5位は「矯正歯科」です。矯正歯科では歯並びと噛み合わせを良くするための治療を行います。歯並びを治療すると見た目がきれいになるだけでなく、歯と歯の隙間が均等になるので細菌が停滞しづらくなり、虫歯や歯周病にかかりにくくなります。また噛み合わせを良くすることで顎に負担がかかりにくくなります。顎は背骨とつながっており、背骨は全身のバランス保つ部位です。顎に負担がかかってしまうと全身のバランスが崩れて、肩こりや頭痛などの症状が出ることがあります。
続いて男女別の結果をご紹介します。
男女別今一番力を入れている診療科目
男性歯科医師のランキングは総合と変わらない結果になりましたが、女性歯科医師のランキングは第2位に矯正歯科が入り、同率3位に審美歯科、6位にホワイトニングが入っています。審美歯科とは見た目を美しくすることを第一に考えた診療科です。例えば健康保険を適用した上での詰め物や被せ物の治療は、基本的に合成樹脂か銀合金を使用します。しかし合成樹脂は経年劣化で脆くなったり、変色してしまうことが多く、銀合金は使用したところが銀色になるので目立ってしまいます。そこで審美歯科ではセラミックやジルコニアといった素材を使って治療ができます。セラミックやジルコニアは天然歯のような色味で詰め物や被せ物を作成でき、他の歯と並んでも自然な見た目にすることができます。また変色や劣化もしにくく、機能面も優れています。審美歯科は見た目だけでなく、機能面においても優れた治療を行います。広い意味で言えば矯正歯科やホワイトニングも審美歯科であり、女性歯科医師の結果の上位に矯正歯科、審美歯科、ホワイトニングが入っているところを見ると、女性歯科医師は歯の治療おいて「見た目を美しくする」という点を重視していることがわかります。
まとめ
今回の調査では、歯科医師は歯周病治療に力を入れている人が多いという結果になりました。歯周病は感染者数がとても多い病気ですが、初期は痛みがないのでかかっていることに気づきにくいです。歯周病は定期的に歯科医院で検診を受けることで発見しやすくなります。また予防歯科処置を受けることで未然に防ぐことができ、なったとしても進行を抑えることが可能です。3~6ヶ月に1度は歯科医院に行き、検診と予防歯科処置を受けるようにしましょう。
調査方法:訪問面接調査
調査対象:20~70代男女現役歯科医師594名
集計期間:2017年1月~2018年11月