会員数わずか600名程の日本顎顔面補綴学会に所属し、専門性の高い顎顔面補綴治療をされている乙丸先生。術後肺炎などの合併症になりにくくなるための周術期口腔機能管理も行っています。そんな先生に医院の特徴や今後についてなどインタビューさせていただいた。
歯学博士
日本補綴歯科学会 専門医 指導医
日本顎顔面補綴学会 認定医
受賞歴、論文、講演実績多数
先生が歯医者を志したきっかけは?
私が小さい頃、歯の治療を受けていたときに、その歯科医院の先生が色々と説明を丁寧にしてくれたので、あまり歯科医院に対して怖いというイメージを持っていませんでした。その先生の影響と、東京医科歯科大学が家から近かったこともあり、歯科医師を目指すことにしました。
昔の歯科医院は、狭いスペースにユニットが横並びになっているところが多かったと思いますが、私が小さい頃に通っていた歯科医院の診療室は、広くスペースを取り、各ユニットが離れている個室のような診療室でした。そのイメージがこのクリニックには反映されています。
日比谷公園前歯科医院の特徴を教えてください。
日本顎顔面補綴学会という学会の会員数は600名程しかいません。私はその内の1人で、日本顎顔面補綴学会の認定医です。その会員のほとんどは大学組織の人なので、基本的に大学病院でしか受けられないような顎顔面補綴治療を当院でも受けていただけるところが特徴です。
手術前にスケーリングなどでお口の環境を整えることで、術後肺炎などの合併症になりにくくなります。東京医科歯科大学附属病院で周術期口腔機能管理を行ってきた経験を生かし、当院では、手術前からの周術期口腔機能管理も行っています。
この場所柄ホワイトニングにも力を入れています。ホワイトニングサロンに行かれている方は多いと思いますが、歯科医院でホワイトニングをされている方はなかなかいません。費用面で二の足を踏まれている方もいらっしゃると思うので、今月からキャンペーンなどもやって、歯が白くなるということをみなさんに体験して欲しいなと思っています。
私が東京医科歯科大学附属病院に在籍していた昨年から新型コロナウイルスが流行し始め、4、5月は緊急の場合を除き歯科の診療を停止していました。東京医科歯科大学附属病院はすごく古い建物だったので、その間に院内改装を行って、昔の歯科医院のような動線だったところを診療科ごとに配置変更し、一連の診断の流れを変えるなどの感染対策をしました。私はその感染対策の際に外来医長をやっていたので、当院の感染対策もその経験が生かされています。可能な限りディスポーザブル製品を使用し、スペースを広く取りプライバシーの守られた診療室には口腔外バキュームを設置することで、エアロゾルなどの飛沫対策も行っています。
また、附属病院に在籍していた際は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動にも力を入れていました。それを当院でも徹底しています。
今後の歯科業界についてと展望を教えてください。
最近私がよく聞いている話が、跡継ぎがおらず、年齢的な問題で閉院される先生が増えているということです。そうなると、ある時を境に歯科医院が足りなくなり、患者さんが溢れてしまうのではと危惧しています。
超高齢社会になり、通院できなくなる人が増えているので、訪問診療のニーズがより高まっていくと思います。私が開業を考えた理由の1つでもあるのですが、東京医科歯科大学附属病院にいたときに訪問診療チームはあったものの、そこに私が入るという選択肢がなく、行ける範囲も限られていました。開業することで、通えなくなってしまった患者さんのところに自由に訪問して医療サービスを提供することができるようになると考えました。私の大学の1期先輩の先生が訪問診療をメインでやられているので、今私が診ている患者さんが寝たきりなどで通えなくなった時に、その先生とうまく連携して訪問診療ができたらと考えています。
当院は先日ものづくり補助金に採択されました。申請したのは、技工物の内製化です。院内でできる限り技工物を作ろうと考えました。内製化することで、製作期間の短縮やコストも下げることができます。なので、今後5年間でまずものづくり補助金を活用して技工物の内製化を進め、安くて良いものを提供できるようにしていけたらと思っています。
当院が行っている周術期口腔機能管理ができる歯科医院はまだまだ少ないです。私の友人が築地にあるがんセンターの口腔外科にいます。そこでは、周術期口腔機能管理含めすべてを自分のところでやるとパンクしてしまうので、近隣の歯科医院に手術前のスケーリングなどをお願いしているのですが、リスクが高いため受け入れてもらえないことがあるそうです。歯科医師会でも周術期口腔機能管理の取組みを推進していますが、進んでいないのが現状です。当院に来ていただければ、手術前、手術直後の口腔ケア、口腔機能の管理ができるということも1つの強みにしていきたいですね。
私は日本補綴歯科学会の指導医でもあるので、あと3年経てば、当院を研修指導施設にすることができます。ここで勉強していただいて、私も若い先生から色々と学びながら、後々は巣立って、地元などで開業してもらえたらと思っています。そんな研修指導施設としての展望も持っています。