「栄養」「運動」「睡眠」から患者様の健康にアプローチされている藤巻先生。患者様を健康にするために、常に研鑽を積まれ、様々な資格も取得されています。そんな先生に医院の特徴や今後についてなどインタビューさせていただいた。
歯学博士
日本体育協会公認スポーツデンティスト
日本スポーツ歯科医学会 認定医
日本顎咬合学会認定咬み合わせ医
日本歯科人間ドック学会 認定医
日本口腔検査学会 認定医
日本ドライマウス協会 認定医
日本アンチエイジング歯科学会認定バクテリアセラピスト
日本補完代替医療学会認定学識歯科医
その他資格
専門健康心理士
食品保健指導士
管理食養士
AEAJアロマテラピーアドバイザー
著書・執筆・論文・講演実績
先生が歯科医師を志したきっかけは?
最初から歯科医師を目指していたわけではなく、中学生時代は花火師や建築家、カメラマンに憧れていました。高校生になり、演劇やバンド活動、テニスなど色々とやりましたが、正直のところ職業にするにはどれも私には向いていませんでした。
ただ、私の母方の親戚には医師が多く、父親が歯科医師という、医療が身近な環境で育ってきた影響と、私は子どもの頃は身体が弱く、たくさん人に助けられてきたので、人を助けることができる医療系の仕事にも興味を持っていました。また、色々なお医者さんにかかる中で、「この先生には身体を預けられないな」と思う方も少なからずいて、患者として嫌な経験をしたので、それを反面教師に医療系の仕事をすればいいのではと思いました。そして、医科と歯科どちらに進むか色々と悩んだ結果、歯科の方から人助けをする可能性を探すことにしました。
大学卒業後は、大学院に進学し、レントゲン1枚からどれだけ多くの情報を得られるかが診療の肝になると考え、診断学を学ぶために歯科放射線学を専攻しました。
また、私は小さい頃からテニスをずっとやってきましたので、患者様の運動機能に対してもなにか役に立てないかと思い、色々と調べている中で「スポーツ歯科」に出会いました。当時はマウスガードについての研究が主だったのですが、もっとアスリートのパフォーマンスにも関わる研究ができないかなと思いながら5年ほど経った頃に、睡眠障害に悩まされているアスリートが多いことを知り、健康になるための1つの方向性として睡眠障害についても研究することにしました。その頃にはすでにサプリメントや栄養に関しても学んでいて、栄養指導的なことはしていたので、睡眠からもアプローチすることができれば、アスリートの健康にトータルでサポートできるのではと思い、睡眠の研究を始めたことが現在のルーツになっています。
ぶばいオハナ歯科の特徴を教えてください。
当院の特徴は、「栄養」「運動」「睡眠」から患者様の健康にアプローチしているところです。
現在予防を重視されている歯科医院が増えてきていますが、予防にはゴールがありません。もちろん予防することは大切なのですが、私はもっとゴールが見えやすく、中期目標にもできる「健康」というものを患者様に得ていただきたいと考えています。
歯や歯周組織に問題がなければ、しっかりと噛んで、食べて、飲み込むことができ、栄養摂取の効率も良くなります。食べられなければ栄養を摂取することができないので、血液も筋肉も作られません。それだけ歯と栄養と健康というのは密接に関わっています。
入れ歯がかぱかぱして合わなくなってしまった患者様や急に見た目が老けてしまった患者様が定期検診で当院に来られた際に、体組成計を使って筋肉量を測らせていただくこともあります。当院には、管理栄養士も在籍しているので、体組成計のデータを元に管理栄養士が患者様のお食事の内容について指導させていただくこともあります。体重が変わっていないから健康というわけではなく、知らないうちに運動量や食事量が減ってしまうことで、筋肉量が減少したり、栄養失調になっていたりして、身体が弱り、結果それがフレイルやサルコペニアにつながってしまいます。なので、歯科医師もしくは管理栄養士が早期に介入することで、深刻な結果を未然に防ぐことが可能になります。
水分の摂取状況をヒアリングさせていただくこともあります。そのヒアリングを元に、夏場であれば、例えば、OS-1であったり、白湯に塩をちょこっと混ぜたものを飲めばいいのかなどの指導もさせていただいています。また、食欲が夏バテで落ちてしまっている方には、栄養価の高い「メイバランス」という栄養食もご案内したりしています。
研究データにもあるように歯の嚙み合わせが運動機能にも大きく関わっています。アスリートは嚙み合わせに問題があるとスピード、パワー、バランスがロスして、本来の力が出せていない可能性があるので、当院では噛み合わせの調整、重心バランスの改善、歩行・走行・ジャンプ力の改善、呼吸法の改善、口腔内のねばつきの緩和、顎関節の痛みの緩和、マウスピース、マウスガードの作製などを行って、本来の力を取り戻して、良いパフォーマンスを発揮できるようにサポートしています。
また、私はテニス協会でアンチドーピング委員もやっているので、例えば、漢方の中でも危ないものがあったり、スポーツドリンクは熱中症対策にはとても重要なのですが、飲み方を間違えると虫歯になりやすくなってしまうので、そういった情報提供などもさせていただいています。
ご高齢の患者様には、運動指導もしています。家でできる筋肉が落ちない運動やストレッチをしていただくことで、歯ぎしりや食いしばりの低減が見込める場合もあります。
実際に歯ぎしりや食いしばりに気づかれていない方がけっこう多いです。ストレス社会になり、歯ぎしりや食いしばりの人が余計に増え、眠りが浅くなってしまっています。
睡眠歯科はいわゆる睡眠時無呼吸症候群の治療だけを行うのではありません。睡眠の質を上げるために嚙み合わせやあごの筋肉の状況を変えることで睡眠の質をあげる取り組みを行っています。
当院には、睡眠に関する検査機器が複数あり、無呼吸かどうかまでわかる検査機器もあるので、そういったものを駆使しながら、無呼吸の可能性や歯ぎしり、食いしばりにより低呼吸になっていないかなどを診断の上、治療しています。
もちろん歯科はどんな治療も全て重要ですが、根本のゴールになりうる「健康」というものを「栄養」「運動」「睡眠」の3つから得ていただけるところが当院のコンセプトであり特徴でもあります。
カウンセリングの際は、まず患者様のお悩みをしっかりと聞かせていただきます。すべてのお悩みを話していただけなければ根本的な原因が突き止められないので、初診は30分から長い患者様の場合で2時間ほどかかることもあります。
当院には片頭痛、首痛などで病院に行ったものの治らないと言って来られる患者様も多いです。その原因を探っていくと、口腔からアプローチできる場合もあるので、私の方で対応できる治療方法をご提案させていただいています。ただ、基本的に私が治療方法を決めることはありません。あくまで私は提案者なので、私の診断に対して、こういった治療ができるということをメリット、デメリット交えながらご説明させていただきます。時間・コスト・機能・見た目など何を重視されるのかは患者様によって様々な価値観があると思いますので、私ができる治療方法をすべてお伝えさせていただいた上で、患者様ご自身で治療方法を選択していただいています。
今後の歯科業界についてと先生の展望を教えてください。
歯を削って詰めるという治療は減っていくと思います。昔と比べて歯を抜くというのはすでに減っていて、抜かずに保存しようという考え方になりました。今度は保存だけでなく、歯が痛まない、壊れない、歯周組織も悪くならないように予防に注力する歯科医院が増えてきています。歯科業界では、2025年くらいから補綴物による収益が3割減るという予測も立てられているので、だからこそ歯を削って詰めるという治療は減っていくと思いますし、なくなるべきだと思っています。もちろん虫歯や歯周病が完全になくなるということはありませんが、今後は「健康のために歯科医院に通いましょう」という時代になっていくと思います。
最近では、お子様の顎骨が小さくなっている影響で、睡眠障害の子がすごく増えています。また、ストレス社会になり、歯ぎしりや食いしばりによって眠りが浅くなっている人も増えているので、「睡眠」からのアプローチも今後は重要になっていくと思っています。
私は昨年「睡眠」に関する講演を30回ほどやらせていただきました。それだけ関心も高まっているので、当院のように「栄養」「運動」「睡眠」から健康にアプローチをしていく歯科医院は増えていくのかなと思っている反面、従来の歯科ももちろん重要なので、インプラント含めて、従前たる歯科治療をやられるところと2極化していくのかなと思います。
私は現在地域の患者様の健康のために柔道整復師さんや整形の先生方と一緒に活動しているのですが、今後の展望として、「あそこに行けば健康になれる」そんな施設を作りたいと考えています。例えば、肩こりや片頭痛で悩まれている方がその施設に来て、悩みをお聞かせいただいた上で、まず歯科医師が診るのか、柔道整復師が診るのかなど、誰が診ればその患者様が1番効率よく健康になれるかを一緒に考えていきたいですね。