痛みがある歯だけ、欠損したところだけを診るではなく、一口腔単位で診査・診断、治療を行っているとくだ歯科医院。その場しのぎではない、生涯にわたって健康な口腔でいられる治療を受けられる体制が整っています。今日は院長の徳田先生に医院の特徴や今後についてなどインタビューさせていただきました。
勉強会・セミナー講師
先生が歯科医師を志したきっかけは?
私の親族は教員が多かったので、高校1年生の頃までは教員の道に進むのかなとなんとなく思っていたのですが、高校の時にお世話になった塾の先生が医学部の出身だったことをきっかけに医療の道に興味を持つようになりました。また、私の性格的にサラリーマンは向いていないと思っていましたし、手先が器用で、人と接する仕事がしたかったので、親族には歯科関係者はいませんでしたが、歯科医師を目指すことにしました。
とくだ歯科医院の特徴を教えてください。
当院の特徴は一口腔単位で診査・診断、治療を行っているところです。一部分の虫歯や欠損だけを診て、すぐに治療に取りかかるのではなく、そうなってしまった原因をまず探っていきます。
一般的に補綴物が取れてしまった場合はまず保険治療、自費治療のどちらで進めていくかを初診時に決めて、型取りをしてしまうところが多いと思います。しかし、根本的な原因を解決しない限り同じことを繰り返してしまうので、当院ではなぜ補綴物が取れてしまったのか、咬合や骨格に問題はないかなど様々な原因を探るために一口腔単位で診査・診断を行っていきます。
診断では、ほぼすべての患者さんに対して、顔貌写真、パノラマ写真、歯周検査、口腔内写真による一連の診査を行い、必要に応じてCTやセファロ撮影も行っています。この詳細な診査の結果を踏まえて、患者さんに現在の口腔内の状況を正確にお伝えし、最適な治療プランを複数ご提案させていただきます。
例えば、初診時に応急処置を行った場合は、2回目に先ほどの詳細な診査を行います。3回目に診断とコンサルテーションをさせていただき、4回目以降で本格的な治療がスタートする流れになります。
どうしても「一口腔単位」の治療に重きを置いているため、本格的な治療がスタートするまでに時間がかかります。話を聞いた上で、治療を当院で継続するかどうかはもちろん患者さんの選択に委ねられますが、このプロセスを受け入れてくださる患者さんには、生涯の口腔内の健康を見据えた治療をご提供させていただきます。
患者さんの生涯を見据えた治療を行っているので、必要な治療であれば矯正をご提案させていただくこともあります。
私自身は矯正治療をしないので、当院から矯正専門医へご紹介させていただくのですが、その際に「丸投げ」をすることはありません。あくまでも主治医は私なので、診断の段階から責任を持って参画し、矯正医とディスカッションの上、治療のゴールを設定していきます。
矯正治療期間中も約3ヶ月に1回は当院へチェックとメンテナンスに来ていただき、矯正治療の進捗状況を確認させていただきます。矯正の装置を外す際も、必ず当院へ確認を取っていただく約束になっているので、いつのまにか矯正装置が外されて終わっているといった状態にはなりません。
患者さんには丁寧で思いやりを持って接することを心がけています。患者さんから言われた言葉で嬉しかったのは「先生の手は優しい」です。患者さんの口腔内にミラーの柄だったり指を入れたりする際はすごく気を遣っています。他にも、患者さんとお話をする際は、「今日はどうしたの?」ではなく「今日はどうされましたか?」と言葉遣い一つとっても気をつけるようにスタッフ含めて徹底しています。
当院には独立したカウンセリングルームも完備しています。チェアサイドで最初のヒアリングを行うのではなく、カウンセリングルームでじっくりと患者さんと向き合ってお話を伺いさせていただきます。
今後の歯科業界についてと先生の展望を教えてください。
セミナーに参加したり、教育活動を通じて歯科業界を見てみると、最近の30代、40代の若い先生方は経営の方に振り切ってしまっている方も多いのかなと感じることがあります。若いうちは診断力や治療技術の向上にもっと重点を置くべきだと思っていて、私自身も臨床歴30年以上になりますが、自身の臨床例を振り返り、問題点を検証し続けてきました。
それをやらずして経営や規模拡大に走ったり、デジタル技術を駆使した見栄えの良い治療をしているだけでは医療の本質を見失い、持続性のある治療が提供できないのではないかと危惧しています。
日本の歯科医療において、最も重要なことは医原性疾患を作らないことだと考えています。日本人の口腔内の健康がここ数十年で悪化した一因は、日本の保険制度にあると思っています。「何か治療をすれば収入になる」という状況から、不必要な治療が行われることもあり、手をつけない方が良い場合でも治療が行われてしまうことがあります。
1つ例を挙げると、6番の歯が欠損している場合に、患者さんがインプラントを選択しなければ、安易に5番、6番、7番にブリッジを入れてしまうことがあります。5番と7番が健康な歯であっても、保険制度にはブリッジという選択肢があるため、エナメル質を削ってブリッジを装着するのです。それでしっかりと治ればいいのですが、データによると、2次カリエスや脱離が生じ、根管治療が必要になり、最終的に歯を失うという悪循環が生まれてしまいます。
これこそが医原性疾患を引き起こしていると私は考えています。
医原性疾患を予防するためには、診査・診断を丁寧に行い、患者さんに最適な治療計画を提案することが重要です。もちろんスキルの向上も欠かせませんので、セミナーや講演を通じてトレーニングの重要性をずっと伝え続けています。
ダイレクトボンディングや根管治療、歯周病の手術、インプラントなどで優れた技術を持つ先生方はたくさんいますが、私自身は骨格や歯列咬合まで考慮しながらトータルで補綴を行う診療の精度を高めていきたいと思います。また、私1人で診ることができる患者さんの数には限りがありますので、その考え方や経験、技術を伝えて、後進の育成もしていきたいなと思っています。
私は歯科の価値はすごく高いと考えていて、歯科治療が適切に行われれば、日本の医療費を大幅に削減できると思っています。歯科とアルツハイマー、心臓病、糖尿病との関係性もわかってきているので、歯科から貢献できることはたくさんあります。
一番理想的なのは、削らずに幼少期からの咬合育成や予防的な矯正治療によって、トラブルが起きない口腔内環境を作ることです。ですが、特に50代以降の患者さんは、保険制度の影響で十分なケアを受けられなかった方も多いので、そういった方々が人生を最後まで健康に過ごせるような治療を提供していきたいですね。