小児歯科のスペシャリストとして、こどもの気持ちに寄り添った治療をされている兼元先生。医院の内装もこどものことを考えた工夫がたくさん施されています。そんな先生に医院の特徴や今後についてなどインタビューさせていただいた。
歯学博士
日本小児歯科学会 専門医 指導医
千葉県小児歯科医会 会長
執筆、講演実績多数
先生が歯医者を志したきっかけは?
私のまわりに医師、歯科医師が多い環境で育ったので、中学生のときは小児科医になりたいと思っていました。
高校生になり、ある日急に歯が痛くなったので近くの歯科医院に行くと、予約制だから2日後に来てくださいと受付の方に言われました。待合室には人がいなかったので、今痛いからなんとか見てくれないかとお願いしていると、中から先生が出てきて「自由診療ならいいよ」と言われました。お金がかかるけど、それならすぐに診てくれると言うのです。子どもが歯が痛いと言っているのに、すぐに治療をしてくれないことに疑問を感じました。
そんな経験もあり、大学を決めるタイミングになった時に、元々は友達と女子医大に行こうと思っていましたが、私は歯を守りたいと考えて、歯学部に進むことに決めました。
ちょうど私が行った大学に、かの有名な大森教授がアメリカからいろんなものを取り入れて、小児歯科の講座を作ってくださいました。当時、子どもの歯は、たとえ虫歯で真っ黒になっても、抜け変わったら大人の歯になるから放って置けばいいというような時代でした。しかし、教授は「乳歯には乳歯の役目がある。乳歯は永久歯を小さくしたものではなく、永久歯をちゃんと導くためのガイドラインだ」それをずっと頭に叩き込まれて、そこから今に至るまで小児歯科だけをやっています。
タエ小児歯科クリニックの特徴を教えてください。
当院は小児歯科専門医院です。歯科衛生士も小児歯科専門の衛生士で、保育士も在籍しています。
子どもの気持ちに寄り添って、気持ちを理解することを心がけています。怖がらないように最大限に配慮して、どうしても治療が必要になってしまったときは、本当に痛くないように丁寧に治療しています。
今、虫歯以上に怖い、口腔機能発達不全症になっている子どもが増えています。その子たちが大きくなったときに、虫歯がゼロで、ちゃんとした話し方、食べ方ができて、歳をとってからも嚥下障害にならないように、離乳食のときからお母さまたちに指導して、子どもにもそれを植え付けていきたいと考えています。
また、マイナス1歳からの予防にも力を入れています。1人目の子どものときはなかなか難しいかもしれませんが、2人目のときは妊娠したとお母さまから教えていただけるので、妊娠時から予防に関してお伝えさせていただいています。
当院の設計は、全て私がしています。子どもが怖がらず、テーマパークのように楽しめるような空間を意識して設計しました。今回で3回目の建て替えになるのですが、私の理想だった、子どもが楽しみながら待っていただけるプロジェクションマッピングを導入しました。そこでは、まず子どもたちに楽しい映像を見せています。今後は、そこに食育と予防関連の内容を入れる予定です。プロジェクションマッピングを見て、楽しみながら知らず知らずのうちに食育や予防についての正しい知識を覚えていただけるようになっています。また、日本の風習についても学べる教材を導入していきたいと考えています。
今後の歯科業界についてと展望を教えてください。
歯科医師は診断学が重要だと思っています。小児歯科に関して言えば、乳歯を残すことで、その下にある永久歯に影響を及ぼすことがたくさんあるので、治療をしないで抜く方がいいのか、経過観察で正しい予防法を指導する方がいいのか、治療をすぐにすべきかを診断できるスキルがより求められてくると思います。
AIの登場により、診断はデータや画像を入れると結果がすぐに出せるようになるかもしれません。歯を削るのもロボットの方がうまくなるかもしれません。でも、そこに心はありません。心がないと治療も単なる削り屋になってしまいます。患者さんの目線に立って、気持ちの上でも合わせてあげることが大事だと思っています。患者さんを中心に考えて、患者さんのお口の中を心からよくしたいという気持ちを持った歯科医院は残っていくと思います。
私は父親から「お金を追うな、人を追え」「医は仁術だ」とずっと教えられてきました。
私の考え方を理解してくれている先生たちに、私の思いや当院のコンセプトを継いでいってもらえたら嬉しいなと思っています。