長年顎関節症に関する研究、研鑽を積まれてきた田口先生。顎関節症に悩まれている患者さんが先生の治療を求めて遠方からも来院されています。そんな先生に医院の特徴や今後についてなどインタビューさせていただいた。
日本顎関節学会 名誉会員
日本顎関節学会 指導医 専門医
日本口腔顔面痛学会 指導医 専門医
名古屋大学医学部非常勤講師
著書
キーワードでわかる 顎関節症治療ガイドブック
顎関節はこうして治す ~運動療法・スプリント療法入門~
顎関節症セルフケア指導ハンドブック
顎関節症スプリント療法ハンドブック 他
先生が歯科医師を志したきっかけは?
私が高校を卒業した頃は非常に歯科医院が少ない時代でした。私の実家は岐阜県の山の中にあるのですが、その周辺には全く歯科医院がなく、村の人たちは歯科医院に行くとなると一日がかりで移動し、しかも、3時間待ちといった状況も多々ありました。元々医療関係に進みたいという思いがあったので、それなら歯科医師になろうと思ったことがきっかけです。
田口歯科医院の特徴を教えてください。
私は大学卒業後、名古屋大学の医学部口腔外科学講座に入局しました。そこの主任教授は顎関節症をメインに診療されている有名な先生で、その先生から顎関節症について一緒に勉強しないかとお声がけいただいたことをきっかけに、そのまま名古屋大学で顎関節症に関する色々な研究や診療を日々行っていました。当時は3,4年で開業される先生がほとんどでしたが、私は顎関節分野のおもしろさにのめり込みそのまま15年大学に残り勉強を続けた後に開業しました。なので、当院には顎関節症で悩まれている患者さんが多く来院されているところが特徴です。
一昔前の顎関節症は咬み合わせが要因であるとされており、咬み合わせをなんとかすることで顎関節症を治療しようという考え方が主流の時期がありました。しかし、咬み合わせはあくまで1つの要因であって、他にも解剖学的要因、生活要因、機能的要因などの色々な要因が混ざり合って発症している多因子疾患であるということが分かっています。
咬み合わせばかりに目を向けて、顎関節症が悪化してしまった患者さんを当時からたくさん診てきましたので、当院では総合的に診断をして治療をしています。
マウスピースなどの装置を使用して、噛みしめを防止した上で、当院での「プロフェッショナルケア」として運動療法を実践します。また、顎関節症治療には「セルフケア」も重要なので、「セルフケア」としての運動療法の指導も行っています。
医師と患者さんの関係は本来対等であるべきです。患者さんに対して、上から目線にならないように、威圧的にならないように、患者さんに寄り添って優しく接することを心がけています。 また、当院に初めて来られた患者さんの中には、今までどんな治療をされてきたのか、なぜその治療をしたのかを理解されていないという方が多いことに驚きました。当院では、患者さんにしっかりとご説明させていただき、治療方針を押し付けるのではなく、ご納得いただいた上で、治療を開始することを大切にしています。
今後の歯科業界についてと先生の展望を教えてください。
今後の歯科業界は、日本のように歯科と医科が独立して存在している以上、廃れることはありません。ただ、現在は歯科医師が増え、情報化社会になりましたので、患者さんが多くの選択肢の中から情報を基に歯科医師を選べる時代になりました。患者さんから選んでいただくためにも努力を惜しまず、研鑽を続けていくことが重要ですし、自分の信念をしっかりと持って患者さんと接する先生はどこまでいっても失敗することはないと思っています。
当時同級生には収入面含めて早く開業すべきだと言われていましたが、その言葉に影響を受けることなく、自分がやりたいことに対して、信念を持ってやってきて本当に良かったと思っています。もしすぐに開業していたら顎関節について追及することもできなかったでしょう。
顎関節症は、日々来院いただいている患者さんから学ぶこともたくさんあります。患者さんごとに症状は違いますし、その症状に対してどのように治療していくかを考える日々です。40数年歯科医師を続けていてもまだまだわからないことがたくさんありますので、研鑽を積むことは今後も継続していきたいと思います。